子どもの将来のためには、小さな頃から英語を教えるのは当たり前!と考える親御さんも少なくありません。しかし、母語である日本語を疎かにしてまで英語を教え込むことは危険です。

母語と母国語の違いを言えますか?

子どもの幸せのために「母語」の能力を伸ばすことが大切、というお話しをする前に、まずは「母語」と「母国語」の違いについて説明させてください。

私たち日本人のほとんどは「母語」=「母国語」=「日本語」です。つまり、母語も母国語も同じく「日本語」なのですが、実はそれぞれ定義が違います。

「母語」とは、幼児期に生活環境の中で自然と身につける言語であり、主に母親から継承する言語です。

いっぽう母国語はいわゆる「公用語」であり、国によっては複数の公用語が存在します。たとえば英語圏というイメージが強いカナダでも、州によってはフランス語が公用語として認められているのです。

習慣と認知能力は母語が決める

なぜ「母語」が大切なのでしょうか。

それは私たちが意思疎通のためだけでなく、何かを考える時にも無意識に頭の中で母語を使用しているからです。そのため、思考や認知能力までも、母語によって影響を受けるという考え方があります。

たとえば、オーストラリアの小さなアボリジニの集落で使われている言葉には「右」「左」という言葉がありません。

「右に曲がって」と説明しても彼らは理解できないため、「西に曲がって」というふうに方角を指定する必要があるのです。このように使われる言葉から、彼らは私たちと違い、常に「方角」を把握しているということがわかります。

ちなみに、行動経済学者のキース・チェンは使う言語と貯蓄率には強い相関関係があると主張しています。

吹き出しアイコン をクリックして日本語字幕を表示させることができます。

母語が最も急激に発達するのは2歳から4歳ごろといわれています。さらに、母語で学習ができる力を養うには9~10歳ぐらいまでかかると考えてよいでしょう。

このいちばん大切な時期に、日本語に接する機会が減ったり日本語より外国語に接する時間が長くなったりすると、日本語の発達が止まり、さらにはそれまでに培った日本語も失われていく危険性があります。

思考能力や学習力を高めるには、土台となる日本語がしっかりしていることが大事です。

出典:公益財団法人 海外子女教育振興財団「母語の大切さをご存知ですか?」