IQよりも注目されるワーキングメモリーとは
「ワーキングメモリー」という脳の機能をご存知ですか。
これはたとえば、夕飯の材料を頭に入れて買い物に向かうというように、行動しながら記憶するための機能で、「脳のメモ帳」と考えていただければわかりやすいと思います。
最近では、このワーキングメモリーの能力が、学力と密接に関連していることが明らかになってきています。
どうして学力まで左右するの?
脳のメモ帳機能であるワーキングメモリーが、なぜ学力に大きく影響するのでしょうか。
簡単な算数の問題を例にとって考えてみましょう。
このような問題を出された場合、
3人で同じ数だけ分けると、キャンディーはいくつ余るでしょう?
人間は、脳のメモ帳に
1)キャンディー
2)10個
3)3人
4)同じ数
5)余りは?
と5つの項目を記憶(短期記憶)しつつ、これを元に「10÷3=3」という計算を行います。しかもこの場合には、さらに最後の「余りは?」という問いも覚えておく必要があるのです。
実際、5歳児をAとB2つのグループに分けて、Aには算数のトレーニング、Bのグループにはワーキングメモリーのトレーニングを行った結果、ワーキングメモリーのトレーニングのみ行ったBグループでも算数のスコアが上昇したといいます。
出典:Working momry and early numeracy training in preschool children
意外なことに、ワーキングメモリーの能力が高い人には「注意を抑制する能力」が高いという特徴があります。これによって、より必要な部分にのみ集中することができるというわけです。
子どもがいつも注意力散漫で、一つのことに集中できないのなら、ワーキングメモリーの能力が弱いのかもしれません。
読み聞かせなら、ワーキングメモリーのスキルアップもできる!?
2013年にロンドンで開催された世界記憶力選手権で、日本人初の「記憶力のグランドマスター」の称号を獲得した池田義博氏によると、子どものワーキングメモリーを高めるためには、読み聞かせが有効だといいます。
本の読み聞かせもワーキングメモリーを高めるためにとても良い方法です。子どもが読み聞かせに慣れてきたら、まだこれはレベルが高いかな、と思えるレベルのものでもわかりやすく説明しながら進めることは、ワーキングメモリーの発達を促します。
簡単なレシピの料理を作らせたりすることも、手順を覚えさせて作らせることによりワーキングメモリーを働かせるトレーニングになるようですね。
これらのことからもわかるように、やはり頭の中にイメージを浮かべて何かを行うということはワーキングメモリーを高めることにとっても有効なことがわかります。
読み聞かせをしている時、子どもは頭の中で、耳から入ってくるお母さんの「声=言葉」と、目から入ってくる絵本の挿絵の両方が結びつき、さらにそこから自分なりの「映像=イメージ」を描いているのではないでしょうか。
また、読み聞かせの最中、子どもの脳では大脳辺縁系という「感情」を司る部分が活発に働くという科学的な実証もあり、「感情」と「イメージ」が結びつく読み聞かせは、子どもの記憶力をアップさせることにも効果的であると言われています。
賢く育つ読み聞かせの方法とは?
少しレベルの高い内容をわかりやすく説明してあげながら読み聞かせをすることで、子どものワーキングメモリーを発達させることができる。
ということから、子どもにとって馴染みのない英語の絵本でも、ストーリーについて会話しながら読み聞かせをすることで、子どものワーキングメモリーの発達を促すことができそうです。
もちろん、親子の会話はママも子どもも理解できる日本語で行うと良いでしょう。ぜひ、試してみてください。